はじめて犬を迎える人にとって、“飼いやすさ”はもっとも気になる点ではないでしょうか。どんな犬でもしつけやお世話は必要で、時には苦労することもあります。けれど、飼育経験がない人にとってはさまざまな不安要素があり、犬を飼う決心がつかないことは多いものです。今回は初心者向けと言われる14犬種を紹介。4つのポイントから、飼いやすさを解説します。どんな犬を飼うか迷っている人は、参考にしてみてくださいね。
初心者向けの犬とは?
はじめて犬を迎えるときは、犬の特性やお世話の仕方などわからないことだらけで不安に感じるものです。そんなとき『なるべく飼いやすい犬を選びたい』と考える方も多いのではないでしょうか。
ただ『初心者向けの犬』といっても、なにをもってそういうのかはよくわからないですよね。初心者向けの犬種を紹介する前に、初心者でも飼いやすいといわれる犬の特徴、4つのポイントをご説明します。
人懐こく友好的
飼い主とのスキンシップやコミュニケーションが大好きで穏やかな性格の子は、子どものいる家庭でも飼いやすいでしょう。
例:パグ、ポメラニアン、トイプードル
お手入れが比較的ラク
抜け毛が少ない・トリミングの必要がない・体臭が少ないといった犬は、お手入れが割合シンプルです。
例:チワワ、ミニチュアダックスフンド、ビーグル
運動量が少なめ
もともと運動量が少なめ、あるいは室内の遊びである程度満足するという犬種は、忙しい飼い主や共働き家庭に向いています。
例:シーズー、マルチーズ、ヨークシャーテリア
しつけがしやすい
従順で賢い犬は、留守番やトイレトレーニングなどを比較的スムーズに習得することができます。また、落ちつきがある、高い集中力をもつ犬も、しつけがしやすいといえるでしょう。
例:チワワ、キャバリア、トイプードル
総合力で飼いやすさ◎ 初心者におすすめの犬
4つのポイントとなる人懐こさ・お手入れのしやすさ・運動量の少なさ・しつけのしやすさの観点から、各犬種を5段階で評価。ここでは、総合点の高い5つの犬種を紹介します。ただし、各犬種の特徴には諸説あるということ、個体差があるということは覚えておいてくださいね。
チワワ
飼い主への愛情が深い犬種。適応能力が優れているので、新しい環境にも比較的すぐに馴染む子が多いでしょう。
運動量が少ない、体臭が少ない、ブラッシングのお手入れが簡単という飼いやすさがあり、散歩や世話の時間がゆっくり取れないという忙しい飼い主にも人気です。
ただし、警戒心が強く小さな見た目以上に勇敢な面もあるので、よその人や犬に吠えることがあります。社会化トレーニングをしっかりおこない、子犬期に”吠え”を予防することをおすすめします
ポメラニアン
活発で好奇心旺盛、愛嬌たっぷりのポメラニアン。必要な運動量が少なく、短時間の散歩か室内遊びで満足できる点、人懐っこく友好的な性格が世代を超えて愛される理由でしょう。
一方で、寂しがり屋な面があり、留守番トレーニングは丁寧におこなう必要がありそうです。
また、警戒・興奮時に吠えたり噛んだりしてしまう子もいるので、子犬期からの社会化期にさまざまなものに慣れさせ、恐怖心を抑えてあげるといいでしょう。
お手入れの点では、ダブルコートで常に抜け毛が多く、ブラッシングは欠かせません。
パグ
陽気でのんびり屋、攻撃性も少ないという性格のよさから、小さい子どものいる家庭にも人気の犬種です。飼い主を困らせることが少なく手がかからないので、初心者でも飼いやすいといえるでしょう。ただし、換毛期にはかなりの量の抜け毛が発生します。
普段のブラッシングは週に1~2回でOKですが、換毛期は頻度を上げる必要があります。また、顔のしわに汚れがたまるとにおいや病気の原因にもなるので、濡れたタオルやウェットシートでやさしく拭いてあげる必要があります。
キャバリア
優し気な表情通り、とても穏やかで愛情豊かなキャバリア。社交的なので、初対面の人やほかの犬とも友好的に接することができます。また、飼い主の性格や生活スタイルに合わせるという、柔軟性ももっています。
無駄吠えが少ない子が多いのも、飼いやすいポイントです。ただし、愛情深さゆえスキンシップが少なすぎるとストレスを抱えてしまいます。
トリミングは必要ありませんが、抜け毛が多いので日々のブラッシングは欠かせません。
狆
希少性の高い狆(チン)は、実は1000年以上もの歴史がある日本原産の犬種。賢さと愛情深さを併せもち、おとなしく運動量も少なめです。
たっぷりの長い被毛が特徴ですがシングルコートで抜け毛は少なく、お手入れは比較的ラクです。ただし、体温調節が苦手な短頭種なので温度管理には注意が必要です。
友好的で愛され上手!ただしトリミングは必要
次に紹介するのは、性格的な特徴から飼いやすいといえる犬種です。しかしトリミングが必要なことから、お手入れの点では少し負担があります。
トリミングが必要な犬種とは、主に下毛(アンダーコート)のないシングルコートの犬種です。二層構造の被毛をもつダブルコートの犬種と比べ、換毛期にごっそり毛が抜けるということがないので、その点はメリットもあるのです。
トリミングさえお願いしてしまえば日々のお手入れは比較的ラク、という考え方もできるでしょう。
トイプードル
フレンドリーな性格と、全犬種中トップクラスの賢さが特徴のトイプードル。その飼いやすさから、多頭飼いする人も多いといわれています。
抜け毛がほとんどなく体臭が少ない点も、ビギナー向き。
さまざまなカットスタイルが楽しめますが、サロン代はかかります。毛玉ができやすいので月に1度のトリミングと最低でも2日に1回のブラッシングをおすすめします。
運動能力が高いので散歩は短時間でも毎日おこない、室内でも一緒に遊ぶ時間を作ってあげましょう。
ヨークシャーテリア
優しく甘え上手な性格が、初心者でも飼いやすいポイントといえます。勇敢で好奇心旺盛な面があり遊びが大好きなので、子どものよき遊び相手になってくれるでしょう。
大きな物音などには敏感な子が多いので、驚かせることがないよう気を付けます。
また、賢い犬種ですが負けん気の強い一面もあるため、根気強くしつけをおこなうことが重要です。
“動く宝石”と呼ばれる美しい被毛をもつだけに、毎日のブラッシングと月に1~2度のトリミングが望ましいです。ただし、抜け毛が少ないので部屋の掃除に悩まされることはあまりありません
ミニチュアシュナウザー
忍耐強く利口で、従順な性格から「最良の家庭犬」ともいわれているミニチュアシュナウザー。
番犬として飼われていた歴史があるので、吠え癖がでてしまうケースもありますが、賢い頭脳を持っているのできちんとしつけを行えば、よいパートナーになるでしょう。
比較的運動量が多い犬種なので、30分程度の散歩を1日2回はおこなうといいでしょう。
また、ダブルコートの割に抜け毛は少なく日々のお手入れはラクなほうですが、毛は伸びやすいので月に1度のトリミングは欠かせません。ブラッシングも毎日おこなうのが理想です。
シーズー
人懐こく協調性があり、利口でしつけがしやすい犬種です。無駄吠えや噛み癖が少なく一人遊びも上手で、留守番が得意であるともいわれています。もちろん、そういった特性はしつけやトレーニングありきのこと。自由に育てすぎるとわがままになる可能性はあります。
抜け毛は少ないですが長毛種のためブラッシングは欠かせません。運動量は少なめですが、散歩に対する熱意には個体差があります
マルチーズ
かわいらしい見た目を裏切らない素直な性格を持ち、人懐こく誰とでも仲よくなれます。
運動量が少なく散歩の時間がとれない人や高齢者でも飼いやすいとされていますが、社交性の育成やストレス発散のために短い時間でも毎日散歩に連れて行ってあげましょう。
純白の被毛が魅力ではありますが、その分お手入れは必要です。汚れが目立ちやすく毛玉もできやすいので、週に2~3回のブラッシングと月に1度のトリミングをおこなうとよいでしょう。
お手入れが比較的ラクな人気犬♪ただしいたずらにはご用心
次の4犬種はブラッシングやトリミングといったお手入れの時間や手間、費用面で飼いやすいといわれています。活発で好奇心旺盛な性格のため、とくに子犬のころにはいたずらをしてしまうことがあります。しかし攻撃的であったり、神経質であったりというわけではないので、しつけや成長により行動は変わっていくでしょう。
遊び好きな子が多いので、たくさん遊びを通じてスキンシップをとってあげるといい関係性を築けます
ミニチュアダックスフンド
朗らかで順応性が高く、飼い主によく懐くので飼いやすい犬種です。
ルーツが狩猟犬なので吠えやすい性質はありますが、利口で忠誠心も強いのでしつけは比較的スムーズ。お迎え後に、できるだけ早くしつけやトレーニングをはじめましょう。
抜け毛が多いためブラッシングは必要ですが、トリミングは不要。穴を掘る習性があるので、いたずらされて困るようなものは片付けておきましょう。
フレンチブルドッグ
社交的で性質的にあまり吠えることがなく、人間やほかの犬にもフレンドリーに接します。大らかなので、飼い主を困らせることもほとんどないようです。
トリミングは不要で毛の絡みがないのでブラッシングはしやすいですが、汚れのたまりやすい顔は毎日タオルなどで拭いてあげましょう。注意したいのは、留守番時のいたずら。好奇心ゆえのいたずらが多いですが、なかにはストレスが原因でいたずらすることもあります。
パピヨン
マリーアントワネットの飼い犬としても知られるフランス原産のパピヨンは、友好的で適応能力が高く飼いやすい犬として知られています。
賢いのでしつけがしやすい一方、悪いことも覚えやすい一面があるため、しつけは慎重におこなうといいでしょう。
ブラッシングは必要ですが、見た目ほどお手入れに手間はかからずトリミングも不要です。運動量が比較的少ないので体力が余ってのいたずらは少ないですが、好奇心が旺盛で活発な面があるので誤飲やいたずらには注意しましょう。
ビーグル
甘えん坊な性格で人懐こく、攻撃性も少ない犬種。愛想がいいのでほかの犬や家族以外の人にもフレンドリーに接することができます。
元気いっぱいで遊び好きなため、子どもの遊び相手にもぴったり。猟犬気質からか、人や犬、音に対して吠えてしまう子もいますが、吠える理由を見極め、刺激に慣れさせるトレーニングをすることで対策は可能です。
甘えん坊な性格ゆえ留守番はあまり得意ではありません。留守番中に吠えたりいたずらしたりといったこともあるので、留守番トレーニングは段階を踏んでしっかりとおこなうことが必要です。
飼い主にとって”いい犬”を育てるには
犬種ごとの特徴からそれぞれの飼いやすさを紹介しましたが、性格や特性には個体差があります。また、飼い主自身の性格、家族構成や生活スタイルによって飼いやすいと感じるポイントは異なるでしょう。なにより大切なのは飼い主が忍耐強く、愛情を持って犬と向き合うことです。
子犬期の社会化に力を入れる
人間と同じく、犬も生活環境やコミュニケーションによって社会性を身に付けていきます。犬の社会化期といわれるのは生後3カ月頃まで。この時期に基本的なしつけをおこない、たくさんの人と触れ合ったり外の環境を経験させたりすることで、従順性や柔軟性を育むことができます。
ほめながらきちんとしつける
叱るしつけが主流の時代もありましたが、今はほめることで犬の能力を伸ばすほうがいいといわれています。犬は、飼い主にほめられたり喜んでもらうのが大好き。できないことを叱るのではなく、できたときにめいっぱいほめてあげてくださいね。
散歩とコミュニケーションを怠らない
運動量が少ない犬種や一人遊びが上手な犬種であっても、散歩やコミュニケーションは必要です。犬にとってよい刺激となるものをたくさん与えることで、問題行動の少ない飼いやすい犬に成長してくれます。
愛犬の性格、反応をよく観察する
しつけや遊びを通して、どんなほめ方をしたときに喜んでいるか、どんなシチュエーションでどう伝えると、愛犬は理解できているのかなど、犬の反応を見ながら触れ合い、愛犬自身が持つ個性に注目しましょう。
まとめ
飼い主との相性や生活スタイルによって、飼いやすい犬・飼いにくい犬というのはあるでしょう。けれど、犬には犬の個性があり、習性があり、それを人間に合わせるのは難しいということは理解してあげたいですね。
ここでご紹介したように、比較的人間にとって飼いやすい性質をもった犬種はあります。ただどの犬種を選んでも、お世話の時間や手間、費用などはある程度かかります。
迎えた以上は、その子の個性を尊重し、じっくり時間をかけて成長に導いてあげてください。